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【難度A】演習1〜京都大学・1989年(後期)〜

2020年8月25日

解答解説

問題

座標平面において,$x$座標,$y$座標がともに整数である点を格子点と呼ぶ.$4$つの格子点$\small \mathrm{O}(0,\,0),\,\mathrm{A}(a,\,b),\,\mathrm{B}(a,\,b+1),\,\mathrm{C}(0,\,1)$を考える.ただし,$a,\,b$は正の整数で,その最大公約数は$1$である.

(1) 平行四辺形OABCの内部(辺,頂点は含めない)に格子点はいくつあるか.

(2) (1)の格子点全体を$\mathrm{P}_1,\,\mathrm{P}_2,\,\cdots,\,\mathrm{P}_t$とするとき,$\triangle\mathrm{OP}_i\mathrm{A}\ (i=1,\,2,\,\cdots,\,t)$の面積のうちの最小値を求めよ.

格子点と整数がテーマです.

格子点の数え方は積分とほとんど同じです.

ある軸($x$または$y$軸,扱いやすくなる方を選ぶ)で切断して,その範囲の整数解の個数を調べに行きます.

(1)はそこまで悩まずに答えが出ると思いますが,(2)が問題です.

まず,三角形の面積をどう表すかは大丈夫でしょうか.

本サイトでは7通りの表現を紹介していますが,平面座標で,整数という条件を使わなければならないことを考えると,

\[\frac12|ay_i-bx_i|\]

と表せたのではないでしょうか.

次に,先にも書いたように「整数」について

「$a,\,b$は正の整数で,その最大公約数は$1$である.」

に反応できたでしょうか.

これは「互いに素」ですよね.扱い方を確認しておきましょう.

「互いに素」の性質と使い方まとめ

short summary! 「互いに素」の2つの定義 ・最大公約数が$1$ ・共通素因数をもたない に沿って利用・証明を覚える それでは見ていきましょう! はじめに 「互いに素」という条件は有理数や ...

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整数条件の中でも「素数」「互いに素」と言った条件はやっぱり超強力です.無視することのないように.

今回は,$a,\,b$互いに素という条件から

$2$数$a,\,b$が互いに素であるとき

$a,\,2a,\,\cdots,\,(b-1)a$を$b$で割った余りはすべて異なり,$1$から$b-1$が$1$回ずつ現れる

→$ax+by$は全ての整数を表せる($ax+by=n$を満たす$(x,y)$が存在する)

という有名事項を思い出さなければなりません.証明はぜひ覚えておいて欲しいのでまとめに記しておきます.

ここは経験が必要でなかなか考えづらかったかもしれませんね.最小値$\dfrac12$を予想した上で,その存在を証明しにいきます.

 

解答


平行四辺形OABCの内部は,不等式

\[0 < x < a\cdots①\]

\[\frac{b}{a}x < y < \frac{b}{a}x+1\cdots②\]

によって表される.

$a,\,b$が互いに素であるので,①に適する$x$の整数値
\[x=1,\,2,\,\cdots,\,a-1\]
に対して,$\dfrac{b}{a}x,\,\dfrac{b}{a}x+1$は整数とならない.さらに,この2数の差が$1$であるので,$\dfrac{b}{a}x$と$\dfrac{b}{a}x+1$の間に整数は一つだけ存在する.

よって,$x=1,\,2,\,\cdots,\,a-1$のそれぞれについて,②に適する$y$は一つ存在し,求める格子点の個数は$a-1$個.

(2)

格子点を$\mathrm{P}_i(x_i,\,y_i)\ (1\leqq i\leqq a-1)$とおく.ここで,$\triangle\mathrm{OP}_i\mathrm{A}$の面積は,
\[\triangle\mathrm{OP}_i\mathrm{A}=\frac12|ay_i-bx_i|\cdots③\]
と表せる.

②より,

$\dfrac{b}{a}x < y_i < \dfrac{b}{a}x+1$

$\Leftrightarrow \,0 < ay_i-bx_i < a$

$\Leftrightarrow \,1\leqq ay_i-bx_i\leqq a-1$

$(\because ay_i-bx_i\in\mathbb{Z})\cdots④$

である.ここで,異なる正の整数$k,\,l$について,
\[ay_k-bx_k=ay_l-bx_l\]
とすると,移項して,
\[a(y_k-y_l)=b(x_k-x_l)\]
が成立する.

$a$と$b$は互いに素であるため,$x_k-x_l$が$a$の倍数となるが,$k\neq l$で$0 < x_k-x_l < a-1$であるので不適.

よって,$ay_i-bx_i\ (1\leqq i\leqq a-1)$は互いに異なる$a-1$個の整数である.

④と合わせて,$ay_i-bx_i$の値は$1,\,2,\,\cdots,\,a-1$を一つずつ取る.よって③より,$\triangle\mathrm{OP}_i\mathrm{A}$の面積が最小となるとき,$ay_i-bx_i=1$であり,そのときの面積は$\dfrac12$

本問で覚えておきたい論証

・互いに素に関する性質

$2$数$a,\,b$が互いに素であるとき

$a,\,2a,\,\cdots,\,(b-1)a$を$b$で割った余りはすべて異なり,$1$から$b-1$が$1$回ずつ現れる

【証明】

$a,\,2a,\,\cdots,\,(b-1)a$を$b$で割った余りが等しい組$ia,\,ja$が存在すれば,$(j-i)a$は$b$で割り切れるが,$a,\,b$が互いに素であることと$1\leqq i-j\leqq b-2$よりこれは不適.

よって$a,\,2a,\,\cdots,\,(b-1)a$を$b$で割った余りはすべて異なり,この中に$b$で割り切れるものは存在しないため,$1$から$b-1$が$1$回ずつ現れる.

 

↓この性質から分かること

$2$数$a,\,b$が互いに素であるとき

$ax+by$はどんな整数でも表すことができる

$ka$を$b$で割った余りが$1$になるものとし,その時の商を$l$とおくと,$ka-lb=1$が成立

つまり,$ax+by=n$を満たす$(x,y)=(kn,\,-ln)$が存在する

 

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