問題演習 問題演習A 整数・整式

【難度A】演習5〜大阪大学・2010年〜

2020年8月30日

解答解説

問題

$l,\,m,\,n$を$3$以上の整数とする。

等式\[\displaystyle \left( \frac{n}{m}-\frac{n}{2}+1 \right) l=2\]を満たす$l,\,m,\,n$の組をすべて求めよ。

さて,整数問題の考え方は3つ押さえておくのでしたね.

整数の基本3ヶ条とその利用

short summary! 約数・倍数関係 大小関係(不等式評価) 剰余系(合同式) の3つから攻める はじめに 今回は整数問題を解く上で理解すべき3つの性質をまとめます. これから整数問題を解く際 ...

続きを見る

  1. 約数・倍数関係に注目する
  2. 大小関係に注目する
  3. 余りに注目する

この3つのどれを用いて「整数の範囲を絞り込むか」が整数問題攻略の鍵となります.

 

さて,今回の問題でまず気にするべきことは

・左辺が分数形であること
・文字が3つあること

の二点です.

そもそも分数形の場合は,「約数・倍数関係」は使うことができませんから,この式をいきなり

「$l$は$2$の約数なので〜〜」

などと書いてしまっては大きな誤りとなります.

そうなると,分母を払って両辺を整数のみの式にすることが必要です

しかし分母を払うと今後は文字が3つある状況が邪魔をして,なかなか約数・倍数関係が見えづらくなってしまうのです.

整数の基本1:約数・倍数関係

short summary! (整数の積)=(約数の分かる値)の形から絞り込む 約数の分かる値は素因数分解が出来る数のこと はじめに 今回は整数の基本3ヶ条の1つ目,約数・倍数関係について解説していき ...

続きを見る

 

そこで発想を変えて,大小関係に注目してみましょう.

自然数をかけて$2$になるのならば,$\displaystyle\frac{n}{m}-\frac{n}{2}+1$は少なくとも$0$より大きくなくてはなりません.

しかし,$n,\,m$が大きくなれば明らかに$\frac{n}{m}$が$\frac{n}{2}$よりも小さくなりますから,この状況は「不自然」=「整数を絞り込む条件として強力」と考えられます.

 

「自然数」や(今回のように)「〜以上の数」と与えられている場合は,整数の範囲がすでに下から不等式評価し終わっている状況と言えます.

つまり,上から不等式評価で整数を押さえることができれば,「○$<$整数$<$×」となって解の候補は有限個に限られるのです.

整数の基本2:大小関係(不等式評価)

short summary! 「○$<$整数$<$×」という形から絞り込む 「自分で文字に大小関係をつける」ことと「不自然な大小に注目する」ことが大事 はじめに 今回は整数の基本3ヶ条の2 ...

続きを見る

$\displaystyle\frac{n}{m}-\frac{n}{2}+1>0$の式から,$m$または$n$について上から不等式評価できれば後はスムーズに解くことができるでしょう.

解答

$\displaystyle \left( \frac{n}{m}-\frac{n}{2}+1 \right) l=2\cdots①$とおく。$l>0$より,①が成立しているとき,

\[\frac{n}{m}-\frac{n}{2}+1>0\cdots②\]が必要である。

\begin{align*}
②&\Leftrightarrow\frac{n}{m}>\frac{n-2}{2}\\
&\Leftrightarrow\frac{2n}{n-2}>m\cdots③
\end{align*}

ここで,$m\geqq3$であるので,

\[\frac{2n}{n-2}\geqq3\Leftrightarrow6\geqq n\cdots④\]

よって,$m\geqq3,\,n\geqq3$と③④より,$m,\,n$の組は

\[(m,\,n)=(3,\,3),\,(3,\,4),\,(3,\,5)\]\[(4,\,3),\,(5,\,3)\]

の$5$つに絞られる。①に代入して$l$を求めると,求める$l,\,m,\,n$の組は,

\begin{align*}
&(l,\,m,\,n)\\
=&(4,\,3,\,3),\,(6,\,3,\,4),\,(12,\,3,\,5)\\
&(8,\,4,\,3),\,(20,\,5,\,3)
\end{align*}

役に立ったら押して頂けると励みになります!

-問題演習, 問題演習A, 整数・整式

error: Content is protected !!

© 2024 ますプラ