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数列

漸化式全パターン徹底解説②:一次の二項間

2020年7月8日

short summary!

一次型の二項間型の漸化式は「比の形」か「差の形」に帰着させる.

はじめに

本サイトでは以下のロードマップに従って漸化式を解説していきます.

「○次」:一般項(an)がいくつかけられているか

「○項間」:一般項(an)が何種類あるか

で分けていきます.今回は2つ目,一次の二項間漸化式について解説します.

一次の二項間

上のロードマップで赤で示したところですね.

一次の二項間漸化式とは,an+1=×an+の形をしたものです.

例)

an+1=3an+2
an+1=2an+n
an+1=nan+2

いわゆる一次式のような形をしており,前回の記事で扱った「差の形」と「比の形」の複合ver.といったところでしょうか.

単刀直入に解き方をいうと,「差の形」と「比の形」のいずれかの形に帰着させるのです.

順に扱っていきます.

差の形にする

まずは「差の形」にして見ましょう.

an+1=×an+を差の形にするには,○を1にしてやるために何かを両辺にかける必要があります.

実は,これは(後ほど扱う「比の形」よりは)簡単な式変形であることが多いです.

というのも,○に入るのは大体は以下の3通り

①定数

例)an+1=3an+3n+1

nの一次式

例)an+1=nan+2n!

nの分数式

例)an+1=nn+1an+2n+1

がほとんどだからです.

まずは上に挙げた例についてどのように比の形にするか学んでいきましょう.

 

an+1=3an+3n+1

着目すべきはan+13anです.両辺に何かをかけたり割ったりすることで,ここが差の形になるようにしましょう.

an+1bn+1

3anbn

を満たすようなbnが出てくる式変形をするのです.

係数3を処理する必要がありますから,両辺を3n+1で割ることで,

an+1=3an+3n+1

an+13n+1=an3n+1

となります.bn=an3nとすればbn+1=bn+1と差の形になっています.

大体の様子は掴めたでしょうか?この調子で残り2つも差の形にしていきましょう.

 

an+1=nan+2n!

着目すべきはan+1nanです.両辺に何かをかけたり割ったりすることで,ここが差の形になるようにしましょう.

an+1bn+1

nanbn

annが順々にかけられていくので,階乗n!が関わっていると予想します.

よって,n!で両辺を割ってみると,

an+1=nan+2n!

an+1n!=an(n1)!+2

となります.bn=an(n1)!とすればbn+1=bn+2と差の形になっています.

 

③ an+1=nn+1an+2n+1

着目すべきはan+1nn+1anです.

an+1bn+1

nn+1anbn

差の形にするためにn+1要素を左辺に,n要素を右辺に移すイメージを持つと,両辺にn+1をかけることで

an+1=nn+1an+2n+1

(n+1)an+1=nan+2

となります.bn=nanとすればbn+1=bn+2と差の形になっています.

 

なお,差の形にする式変形は簡単ですが,出てくる階差数列をΣ計算する必要があります.

Σ計算のできない式だった場合,それは解けないか,計算間違いをしているということになります.

比の形にする

an+1=×an+を比の形にするには,△を消してやらねばなりません.

△を消すにはどのような式変形をすれば良いのか.

それは,

f(n+1)=×f(n)+を満たすf(n)を見つけて辺々引く

という式変形です.一次の不定方程式なんかと同じですね.

an+1=×an+

f(n+1)=×f(n)+

↓辺々引く(△が消える!)

an+1f(n+1)=×{anf(n)}

bn=anf(n)とすれば,bn+1=×bn

しかし,どうやってこのf(n)を見つけるのでしょう.

うまく見つけられるようにするには,いくつかのパターンを身につけ,慣れていく必要があります.

少し大変ですが,以下の練習に取り組んでみましょう.次の漸化式を比の形に直してください.

an+1=5an+8

an+1=2an+2n2n

an+1=4an+3n

an+1=an+n2n

an+1=5an+8

f(n+1)=5f(n)+8を満たすようなf(n)を予想しましょう.

定数しか出てきませんから,とりあえずf(n)も定数αと考えて代入すると

α=5α+8α=2

となります.この方程式は特性方程式とも呼ばれますね.

これを与式と辺々引くことで

an+1=5an+8

an+1+2=5(an+2)

となります.bn=an+2とすればbn+1=5bnと比の形になっています.

なお,これも単なる式の同値変形.

答案にはf(n)を求めるくだりを省いて,①のように書いてしまっても構わないのです.

 

an+1=2an+2n2n

f(n+1)=2f(n)+2n2nを満たすようなf(n)を予想しましょう.

二次式が足されているので,f(n)も二次式なのではないかと予想して,f(n)=An2+Bn+Cとおいてみましょう.

A(n+1)2+B(n+1)+C

=2(An2+Bn+C)+2n2n

整理をして係数比較をすると

A=2A+2
2A+B=2B1
A+B+C=2C

ですから

A=2,B=3,C=5となります.

よって,f(n)=(2n2+3n+5)であるので,与式は

an+1=2an+2n2n

an+1+2{(n+1)2+3(n+1)+5}

=2(an+2n2+3n+5)

と同値変形できて,bn=an+2n2+3n+5とすればbn+1=2bnと比の形になっています.

なお,このように式が長くなる場合はf(n)で置き換えるとスッキリ見えます.bn=anf(n)と書くのですね.

 

大体の様子は掴めましたか?この調子で残りも考えていきます.

 

an+1=4an+3n

f(n+1)=4f(n)+3nを満たすf(n)は指数関数となりそうです.f(n)=A3nとおいて代入してみましょう.

A3n+1=4A3n+3n

3nで割ると,3A=4A+1となりA=1と求まります.

よって,f(n)=3nと書くことができるので,与式は

an+1=4an+3n

an+1+3n+1=4(an+3n))

と同値変形ができます.

 

an+1=an+n2n

f(n+1)=f(n)+n2nを満たすf(n)を見つけます.

一次式に指数関数がかけられている形をしていますから,f(n)も合わせて(An+B)2nとおいてみましょう.

{A(n+1)+B}2n+1

=(An+B)2n+n2n

2nで割ると,2An+2A+2B=(1A)nBとなります.

係数比較によりA=13,B=29と求まります.

よって,f(n)=19(3n2)2nと書くことができて,与式は

an+1=an+n2n

an+119(3n+1)2n+1

={an19(3n2)2n}

と同値変形ができます.

 

比の形にできてしまえば,一般項はすぐに求めることができます.

(上のように等比数列になる問題の出題頻度が最も高いと思います.)

 

使い分けの話

さて「差の形」または「比の形」に式変形をする話をしてきたわけですが,どちらを選ぶのが良いのでしょうか.

一度メリットデメリットを整理しておきます.

メリット デメリット
差の形 式変形が簡単 その後に行うΣ計算が大変なことがある
比の形 f(n)が見つかればワンパターンで簡単 f(n)を見つけるのが大変なことがある

これらのことを考慮して,便宜上以下のように使い分けをしていくことにしましょう.

  • まずは差の形になるように両辺に何かをかけてみる

 ↓Σ計算がしづらいようなら

  • 比の形になるようにf(n+1)=×f(n)+を満たすf(n)を探してみる

とはいえ,an+1=5an+8のような漸化式なら両辺を5n+1で割るより先に特性方程式を解いて比の形を目指すでしょう.

演習量をしっかり積むことで使い分けに慣れてくると思います.まずはそれぞれの章で扱った例を繰り返し演習して見てください.

まとめ

一次型の二項間漸化式an+1=×an+は差の形もしくは比の形に帰着させる.

・差の形を目指す

→○が1になるように両辺に何かをかける

・比の形を目指す

→△が消えるようにf(n+1)=×f(n)+を満たすf(n)を見つけて辺々引く

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