short summary!
一次型の二項間型の漸化式は「比の形」か「差の形」に帰着させる.
はじめに
本サイトでは以下のロードマップに従って漸化式を解説していきます.
「○次」:一般項($a_n$)がいくつかけられているか
「○項間」:一般項($a_n$)が何種類あるか
で分けていきます.今回は2つ目,一次の二項間漸化式について解説します.
もくじ
一次の二項間
上のロードマップで赤で示したところですね.
一次の二項間漸化式とは,$a_{n+1}=○\times a_n+△$の形をしたものです.
例)
$a_{n+1}=3a_n+2$
$a_{n+1}=2a_n+n$
$a_{n+1}=na_n+2$
いわゆる一次式のような形をしており,前回の記事で扱った「差の形」と「比の形」の複合ver.といったところでしょうか.
単刀直入に解き方をいうと,「差の形」と「比の形」のいずれかの形に帰着させるのです.
順に扱っていきます.
差の形にする
まずは「差の形」にして見ましょう.
$a_{n+1}=○\times a_n+△$を差の形にするには,○を$1$にしてやるために何かを両辺にかける必要があります.
実は,これは(後ほど扱う「比の形」よりは)簡単な式変形であることが多いです.
というのも,○に入るのは大体は以下の3通り
①定数
例)$a_{n+1}=3a_n+3^{n+1}$
②$n$の一次式
例)$a_{n+1}=na_n+2n!$
③$n$の分数式
例)$\displaystyle a_{n+1}=\frac{n}{n+1}a_n+\frac{2}{n+1}$
がほとんどだからです.
まずは上に挙げた例についてどのように比の形にするか学んでいきましょう.
① $a_{n+1}=3a_n+3^{n+1}$
着目すべきは$a_{n+1}$と$3a_n$です.両辺に何かをかけたり割ったりすることで,ここが差の形になるようにしましょう.
$a_{n+1}$→$b_{n+1}$
$3a_n$→$b_n$
を満たすような$b_n$が出てくる式変形をするのです.
係数$3$を処理する必要がありますから,両辺を$3^{n+1}$で割ることで,
$a_{n+1}=3a_n+3^{n+1}$
$\displaystyle \Leftrightarrow \frac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\frac{a_n}{3^n}+1$
となります.$b_n=\frac{a_n}{3^n}$とすれば$b_{n+1}=b_n+1$と差の形になっています.
大体の様子は掴めたでしょうか?この調子で残り2つも差の形にしていきましょう.
② $a_{n+1}=na_n+2n!$
着目すべきは$a_{n+1}$と$na_n$です.両辺に何かをかけたり割ったりすることで,ここが差の形になるようにしましょう.
$a_{n+1}$→$b_{n+1}$
$na_n$→$b_n$
$a_n$は$n$が順々にかけられていくので,階乗$n!$が関わっていると予想します.
よって,$n!$で両辺を割ってみると,
$a_{n+1}=na_n+2n!$
$\displaystyle \Leftrightarrow \frac{a_{n+1}}{n!}=\frac{a_n}{(n-1)!}+2$
となります.$b_n=\frac{a_n}{(n-1)!}$とすれば$b_{n+1}=b_n+2$と差の形になっています.
③ $\displaystyle a_{n+1}=\frac{n}{n+1}a_n+\frac{2}{n+1}$
着目すべきは$a_{n+1}$と$\frac{n}{n+1}a_n$です.
$a_{n+1}$→$b_{n+1}$
$\displaystyle \frac{n}{n+1}a_n$→$b_n$
差の形にするために$n+1$要素を左辺に,$n$要素を右辺に移すイメージを持つと,両辺に$n+1$をかけることで
$\displaystyle a_{n+1}=\frac{n}{n+1}a_n+\frac{2}{n+1}$
$\displaystyle \Leftrightarrow (n+1)a_{n+1}=na_n+2$
となります.$b_n=na_n$とすれば$b_{n+1}=b_n+2$と差の形になっています.
なお,差の形にする式変形は簡単ですが,出てくる階差数列をΣ計算する必要があります.
Σ計算のできない式だった場合,それは解けないか,計算間違いをしているということになります.
比の形にする
$a_{n+1}=○\times a_n+△$を比の形にするには,△を消してやらねばなりません.
△を消すにはどのような式変形をすれば良いのか.
それは,
$f(n+1)=○\times f(n)+△$を満たす$f(n)$を見つけて辺々引く
という式変形です.一次の不定方程式なんかと同じですね.
・$a_{n+1}=○\times a_n+△$
・$f(n+1)=○\times f(n)+△$
↓辺々引く(△が消える!)
$a_{n+1}-f(n+1)=○\times \{a_n-f(n)\}$
$b_n=a_n-f(n)$とすれば,$b_{n+1}=○\times b_n$
しかし,どうやってこの$f(n)$を見つけるのでしょう.
うまく見つけられるようにするには,いくつかのパターンを身につけ,慣れていく必要があります.
少し大変ですが,以下の練習に取り組んでみましょう.次の漸化式を比の形に直してください.
① $a_{n+1}=5a_n+8$
② $a_{n+1}=2a_n+2n^2-n$
③ $a_{n+1}=4a_n+3^n$
④ $a_{n+1}=-a_n+n2^n$
① $a_{n+1}=5a_n+8$
$f(n+1)=5f(n)+8$を満たすような$f(n)$を予想しましょう.
定数しか出てきませんから,とりあえず$f(n)$も定数$\alpha$と考えて代入すると
$\alpha=5\alpha+8\Leftrightarrow \alpha=-2$
となります.この方程式は特性方程式とも呼ばれますね.
これを与式と辺々引くことで
$a_{n+1}=5a_n+8$
$\Leftrightarrow a_{n+1}+2=5(a_n+2)\cdots①$
となります.$b_n=a_n+2$とすれば$b_{n+1}=5b_n$と比の形になっています.
なお,これも単なる式の同値変形.
答案には$f(n)$を求めるくだりを省いて,①のように書いてしまっても構わないのです.
② $a_{n+1}=2a_n+2n^2-n$
$f(n+1)=2f(n)+2n^2-n$を満たすような$f(n)$を予想しましょう.
二次式が足されているので,$f(n)$も二次式なのではないかと予想して,$f(n)=An^2+Bn+C$とおいてみましょう.
$A(n+1)^2+B(n+1)+C$
$=2(An^2+Bn+C)+2n^2-n$
整理をして係数比較をすると
$A=2A+2$
$2A+B=2B-1$
$A+B+C=2C$
ですから
$A=-2,\,B=-3,\,C=-5$となります.
よって,$f(n)=-(2n^2+3n+5)$であるので,与式は
$a_{n+1}=2a_n+2n^2-n$
$\Leftrightarrow a_{n+1}+2\{(n+1)^2+3(n+1)+5\}$
$=2(a_n+2n^2+3n+5)$
と同値変形できて,$b_n=a_n+2n^2+3n+5$とすれば$b_{n+1}=2b_n$と比の形になっています.
なお,このように式が長くなる場合は$f(n)$で置き換えるとスッキリ見えます.$b_n=a_n-f(n)$と書くのですね.
大体の様子は掴めましたか?この調子で残りも考えていきます.
③ $a_{n+1}=4a_n+3^n$
$f(n+1)=4f(n)+3^n$を満たす$f(n)$は指数関数となりそうです.$f(n)=A\cdot3^n$とおいて代入してみましょう.
$A3^{n+1}=4A3^n+3^n$
$3^n$で割ると,$3A=4A+1$となり$A=-1$と求まります.
よって,$f(n)=-3^n$と書くことができるので,与式は
$a_{n+1}=4a_n+3^n$
$\Leftrightarrow a_{n+1}+3^{n+1}=4(a_n+3^n))$
と同値変形ができます.
④ $a_{n+1}=-a_n+n2^n$
$f(n+1)=-f(n)+n2^n$を満たす$f(n)$を見つけます.
一次式に指数関数がかけられている形をしていますから,$f(n)$も合わせて$(An+B)2^n$とおいてみましょう.
$\{A(n+1)+B\}2^{n+1}$
$=-(An+B)2^n+n2^n$
$2^n$で割ると,$2An+2A+2B=(1-A)n-B$となります.
係数比較により$A=\frac13,\,B=-\frac29$と求まります.
よって,$f(n)=\frac19(3n-2)2^n$と書くことができて,与式は
$a_{n+1}=−a_n+n2^n$
$\Leftrightarrow a_{n+1}-\frac19(3n+1)2^{n+1}$
$=-\{a_n-\frac19(3n-2)2^{n}\}$
と同値変形ができます.
比の形にできてしまえば,一般項はすぐに求めることができます.
(上のように等比数列になる問題の出題頻度が最も高いと思います.)
使い分けの話
さて「差の形」または「比の形」に式変形をする話をしてきたわけですが,どちらを選ぶのが良いのでしょうか.
一度メリットデメリットを整理しておきます.
メリット | デメリット | |
差の形 | 式変形が簡単 | その後に行うΣ計算が大変なことがある |
比の形 | $f(n)$が見つかればワンパターンで簡単 | $f(n)$を見つけるのが大変なことがある |
これらのことを考慮して,便宜上以下のように使い分けをしていくことにしましょう.
- まずは差の形になるように両辺に何かをかけてみる
↓Σ計算がしづらいようなら
- 比の形になるように$f(n+1)=○\times f(n)+△$を満たす$f(n)$を探してみる
とはいえ,$a_{n+1}=5a_n+8$のような漸化式なら両辺を$5^{n+1}$で割るより先に特性方程式を解いて比の形を目指すでしょう.
演習量をしっかり積むことで使い分けに慣れてくると思います.まずはそれぞれの章で扱った例を繰り返し演習して見てください.
まとめ
一次型の二項間漸化式$a_{n+1}=○\times a_n+△$は差の形もしくは比の形に帰着させる.
・差の形を目指す
→○が$1$になるように両辺に何かをかける
・比の形を目指す
→△が消えるように$f(n+1)=○\times f(n)+△$を満たす$f(n)$を見つけて辺々引く