もくじ
解答解説
問題
(1)$n$を正の整数とする。$x_0,\,x_1,\,\cdots.\,x_n$を閉区間$0\leqq x\leqq 1 $上の相異なる点とする。このとき,$0<x_k-x_j\leqq \dfrac{1}{n}$をみたす$j,\,k$が存在することを示せ。
(2)$\omega$を正の無理数とする。任意の正の整数$n$に対して,$0<l\omega+m\leqq\dfrac{1}{n}$をみたす整数$l,\,m$が存在することを示せ。
(1)(2)ともに存在証明の問題です.
存在証明の手法といえば,5つ押さえておくんでしたね.
- 具体的に要素を挙げる
- 中間値の定理
- 平均値の定理
- 部屋割り論法
- 背理法
→「任意の要素について〜ではない」を条件にしてみる
忘れていた人は下を参照してください.
-
「存在」命題の証明法5パターン
short summary! 存在命題の証明は5手覚える. 1具体的に要素を挙げる 2中間値の定理 3平均値の定理 4部屋割り論法 5背理法 はじめに 存在命題は,名前の通り「存在」に関するもので,全 ...
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答えから述べると,(1)では「部屋割り論法」を用います.「剰余」「距離」が部屋割り論法では頻出なのでした.
当然,「背理法」で矛盾を示しても構いません.
全ての差が$\dfrac{1}{n}$より大きくなってしまうと,$x_0$と$x_n$の距離が$1$を超えてしまうためです.(これは本質的に部屋割り論法と同じです)
$n$で難しかったら小さい値で実験して状況を把握するのは非常に有効です.
本問も,$n=3$くらいで試してみれば「当たり前じゃない?」と思えたでしょう.
(2)は難問です.(1)が誘導になっていることを存分に意識してもなお難しいと言えます.
(1)を利用しようと思えば,小数($0$と$1$の間)を作る必要があるため,ガウス記号を用いて整数部分を引きにいきます.
整数条件を直接利用するというのではなく,小数ありきで整数部分を考えるという流れなのでアプローチしづらいですね.
解答
(1)
閉区間$0\leqq x\leqq1$を,$n$個の区間
\begin{align*}
&\dfrac{k-1}{n}\leqq x<\dfrac{k}{n}\\&\quad (k=1,\,2,\,\cdots,\,n-1)\\
&\dfrac{n-1}{n}\leqq x\leqq1
\end{align*}
に分ける。このとき,$n+1$個の相異なる実数
\[x_0,\,x_1,\,\cdots,\,x_{n-1},\,x_n\]
のうち少なくとも$2$つは同じ区間に属する。これを$x_i,\,x_j\ (x_i<x_j)$とすると,
\[0<x_j-x_i\leqq \dfrac{1}{n}\]
となる。よって題意は示せた。
(2)
正の無理数$\omega$に対して$n+1$個の実数
\[0\cdot\omega-[0\cdot\omega],\,1\cdot\omega-[1\cdot\omega],\,\cdots\]\[\cdots n\cdot\omega-[n\cdot\omega]\]
について考える。ただし,実数$x$に対して$[x]$は$x$を超えない最大の整数を表すものとする。このとき,
\[0\leqq k\omega-[k\omega]<1\ (k=0,\,1,\,\cdots,\,n)\]
であるから,これら$n+1$個の実数のうち少なくとも$2$つは(1)の$n$個の区間について同じ区間に属する。そのような$k$を$s,\,t\ (s<t)$としたとき,$a=t-s,\,b=[t\omega]-[s\omega]$とすると,$a,\,b$は整数であり,
\begin{align*}
&|a\omega-b|\\
=&|(t-s)\omega-([t\omega]-[s\omega])|\\
=&|(t\omega-[t\omega])-(s\omega-[s\omega])|\leqq\frac{1}{n}
\end{align*}
をみたす。また,$\omega$は無理数なので$a\omega+b\neq0$である。
よって,$0<|a\omega-b|\leqq\dfrac{1}{n}$が成立しており, \begin{align*} a\omega-b>0\text{ならば,}&0<a\omega-b\leqq\dfrac{1}{n}\\
a\omega-b<0\text{ならば,}&0<-a\omega+b\leqq\dfrac{1}{n}
\end{align*}
となって,題意をみたす整数$l,\,m$の存在が示された。