論証

「存在」命題の証明法5パターン

2020年6月23日

short summary!

存在命題の証明は5手覚える.
1具体的に要素を挙げる
2中間値の定理
3平均値の定理
4部屋割り論法
5背理法

はじめに

存在命題は,名前の通り「存在」に関するもので,全称と対の関係にあります.

「”ある/適切な/適当な”nについて成立」

「〜を満たすようなnが存在する」

のようなセリフとして登場します.

今回はこの「存在」が絡んだ証明問題の解法を学んでいきましょう.

存在命題の証明

存在証明は全称命題よりも分かりやすいと思います.

「存在」には「少なくとも1つ」という意味が含まれていますから,題意を満たすものを1つ見つけてくれればいいわけです.

しかし,難問になると簡単には見つからないものも多く,証明方法として

どこにあるのかはわからないけれどどこかにはありますよ

と言った大雑把な見つけ方をする場合があります.

  1. 具体的に要素を挙げる
  2. 中間値の定理
  3. 平均値の定理
  4. 部屋割り論法
  5. 背理法
    →「任意の要素について〜ではない」を条件にしてみる

以上の5手が覚えるべきものです.⑤背理法は,①から④までを考えた結果困ってしまった場合に考えてください.

それぞれについてお話ししていきましょう.

具体的に要素を挙げる

これは先ほどにも書きました通り,

「存在」を示したければ1つ見つけてくれば良い

という考え方です.

一番大事な考え方であるにも関わらず,他のいろんな知識が邪魔して落とし穴になってしまうところ.

 

「あるxについてx2+3x+1<0を示せ」

と言われればそれは

x2+3x+1の最小値<0

です.

とにかく0より小さい値を1つ見つけたいので,左辺の一番小さい値を挙げれば問題ないだろう,と考えるのですね.

全称とは違い,どの文字について存在命題なのかが明示されることが多いので,その点では分かりやすいかもしれません.

 

全称命題の記事で「2変数の問題では領域図示を試す」というお話をしたと思いますが,存在命題でも効果があります.

「①かつ②を満たすような変数x,yが存在することを示せ.」

という問題に対して,

「①と②の領域に共有部分がある」と読み替えればokです.

もっと言えば,①②の共有部分の適当な要素x,yを提示すれば存在証明として成立していますから,それでも問題ありません.

中間値の定理

中間値の定理は「連続関数における解の存在」を示す際に特に重宝する手法です.

f(a)f(b)の間の値cを与えるようなxaxbに存在する

という定理です.

f(a)f(b)の間を連続的に動くなら,通り過ぎたり戻ったり色々動いたとしても,図の赤線を超えてしまうよね,と言っています.

逆に連続でなければ,図の赤線をヒョイっと飛び越えて動くこともあり得ますから,上の定理は成立しません.

存在命題の証明あるあるなのですが,これも至極当たり前に感じてしまいますね.

 

よく出てくるのはグラフの交点=連立方程式の解の存在です.

二次方程式の解の配置では馴染み深いはず.

例題

二次関数f(x)=ax2+bx+cに対して,a+c<b<0<aが成立しているときf(x)=0は絶対値が1より大きい2実数解を持つことを示せ.

絶対値が1の数は±1です.解の配置でまず考えなくてはならないのは端点における値

今回で言うとf(1),f(1)です.計算してみると

f(1)=ab+c
f(1)=a+b+c

です.与えられた条件よりこれらが負であることが分かります.最高次係数は正なので,グラフの概形は以下のよう.

二次関数なので,xをずっと小さくしたりずっと大きくすれば正の値になるはず.

マイナスとプラスを連続的に動くためにはその境界であるx軸を通らなければなりません ←中間値の定理

よって1未満と1より大きいところに解が出てくることがわかりました.

厳密に答案を書くなら,見つけた解以外には存在しないことに言及しておきましょう.

 

このように,「異符号の間を連続に動けば0を通る」の形で解の存在範囲を定めることが多いです.まとめておくと

  • f(a)f(b)<0

    abの間にf(x)=0の解が少なくとも1つ存在
  • f(a)f(b)<0に加えてy=f(x)単調な関数

    abの間にf(x)=0の解が唯1つ存在

これを覚えておけば一旦okです.単調なら存在を強めて「唯一」と言えることも知っておきましょう.数Ⅲでよく問われます.

 

例題解答

題意の条件より

f(1)=ab+c<0
f(1)=a+b+c<0

である.a>0より下に凸の放物線であるから,グラフの概形は以下のようになる.

ここで,xが十分に小さい値でf(x)>0xが十分に大きい値でf(x)>0となり,y=f(x)は連続関数であるから,x<1x>1の範囲にそれぞれ少なくとも1解存在する.

また,二次方程式の解は高々2個であるため,上記以外の解は存在せず,題意は示された.

平均値の定理(数Ⅲ)

平均値の定理は,特に微分係数に関する存在証明で用います.

f(b)f(a)ba=f(c)を満たすようなca<c<bに存在する

と言う定理です.証明は「ロルの定理」を用いますが,図を見ればなんとなく正しいことは分かると思います.

正直,存在証明の問題よりも,極限や不等式の証明等でお目にかかることが多いですね.

覚えておきたいのは

関数の差の形f(b)f(a)

を見たときに平均値の定理の考えると言うこと.証明も含めて,詳しい話はまた別の機会にしましょう.

部屋割り論法

有限個に分類できるような集合に対する存在命題で用います.

n個の「部屋」にn+1個の「物」があれば,同じ「部屋」に分類される「物」が少なくとも1組存在する

と言うことで,これも数学というよりは当たり前の論理でしょう.

わかりづらければ少ない数で考えてみてください.

3つの巣に4羽の鳩が入ろうとすると,全員がシングルルームで快適に寛ぐことができなさそう,という訳ですね.

頻出の2テーマを押さえておけば,入試に関しては十分と言えるでしょう.

剰余

剰余系は整数全体を有限個の集合に分けられる点で優れています.部屋割り論法において最も頻度が高く,相性もよいです.

例)5個の数の中から,その差が4で割り切れるような2数を選ぶことができる

「部屋」:4で割った余り4種類
「物」:5個の数

 

距離

距離を有限個区間に区切って,二点間の距離について論じる問題が散見されます.

例)2m幅の道に3本の木を植えると,2本の差が1m以内の木が存在する

「部屋」: 区間0x<1,1x2の2つ
「物」:3本の木

 

以下の例題にチャレンジしてみてください.

例題

以下の各問いに答えよ.

(1)空間内に互いに異なる格子点を9個とる.このとき,中点も格子点となるような2点が存在することを示せ.ただし,格子点とはx,y,z座標全てが整数であるような点を指す.

(2)2n個の自然数の中からn+1個を選ぶとき,その中に連続する2個の数が必ず含まれることを示せ.

「部屋割り論法をいつ使うのか」と聞かれるとはっきり答えるのはなかなか難しいです.

存在命題と有限集合(有限個の要素)が合わさったときに使えるか試してみましょう.

多くの問題において,「物」の数は与えられています.

 

(1)なら,「9点」選ぶ訳ですから,もし部屋割り論法を用いるとすれば,「部屋」の数は91=8個以下でなければなりません.

中点は「足して2で割る」訳ですから,座標が2で割れるか(つまり偶奇)が問題になりますね.

x,y,zの偶奇がすべて一致するような組が存在すれば良いので…これで8個の部屋が作れたでしょうか.

 

(2)も同様,「n+1個」選ぶ訳ですから,もし部屋割り論法を用いるとすれば,「部屋」の数はn+11=n個以下です.

n個,と言われると(具体的な数値ではないので)難しく感じるかもしれません.少し実験してみましょう.

1,3,,2n1

とできるだけ連続整数とならないように数を選ぶと,これでn1個です.

あと一つはどうしても偶数から選ぶ必要が出てきますね.ここで連続なとこが生まれてしまいます.

では,部屋はどのように作ればいいでしょう.2n個の数をn個の部屋に分けることと,上で実験したことを考え合わされば分かるはずです.

例題解答

(1)

(x,y,z)のそれぞれの座標が偶奇いずれであるか考えると,その場合の数は,23=8通り.

9点選ぶと,その中にx,y,zすべてについて偶奇が一致する2点が存在し,その中点は格子点であるため題意は示された.

(2)

2n個の数を,

(1,2),(3,4),,(2n1,2n)

というn個の組に分ける.n+1個選ぶと,同じ組に属する2数が存在し,その2数は連続しているため題意は示された.

 

まとめ

  1. 具体的に要素を挙げる
    →1つでも当てはまるものを見つければ良い
  2. 中間値の定理
    連続関数のとき
  3. 平均値の定理
    微分係数が関与するとき
  4. 部屋割り論法
    有限に分類できるものが関与するとき(特に「剰余」「距離」
  5. 背理法

の5通りの方法を考える.

①:具体的に見つけてくる

②-④:(正確な場所はわからないけど)どこかに存在することは分かる

という大まかな2通りに分けられていることを理解しておきましょう.

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