整数・整式

「互いに素」利用と証明の演習

2020年5月28日

short summary!

互いに素は否定と肯定の定義を軸に考えよう!
→「互いに素」の解説

はじめに

今回は「互いに素」がテーマとなる問題の演習を積んでいきましょう.

別の記事(下にリンクあり)で「互いに素」について定義からしっかりと解説しているので,学習してから本記事を見てください.

問題

 

問題1

$a,\,b,\,c$を0でない整数とする.$x^3+ax^2+bx+c=0$が有理数解を持つなら,それは整数に限ることを示せ.

問題2

$a,\,b$を互いに素な2数とするとき,以下の2数の組も互いに素であることを示せ.

(1) $A=a+2b$と$B=2a+5b$
(2) $C=a^2+b^2$と$D=ab$

互いに素の記事で書いたまとめを下に記しておきます.

 

$a,\,b$が互いに素の時

  1. 「肯定」最大公約数が$1$である
    利用:$a,\,b$について整理($a=A,\,b=B$の形)
    証明:最大公約数をおいて,それが$1$であることを示す
  2. 「否定」共通素因数を持たない
    利用:両辺を$a,\,b$でくくり出す($a\cdot p=q\cdot b$の形)
    証明:共通素因数をおいて,矛盾することを示す

 

では解説に入りましょう.

解説編:問題1

まず,有理数は$\displaystyle「=\frac{q}{p}$ ($p,\,q$は互いに素な整数,$p\geq1$)」とおいて代入,が大事です.これが定義ですからね.

さて,代入すると$a,\,b,\,c$に加えて$p,\,q$という整数条件も増えるわけですが,分数の形になっています.

このままだと整数という強い条件が活かせていないので,分母を払います.

\[q^3+apq^2+bp^2q+cp^3=0\]

ここから$p,\,q$が互いに素という条件を利用するためにはどうすれば良いでしょうか.

$p,\,q$が等号で結ばれているので,②を使いましょう.$p,\,q$を両辺にくくり出せばよいですね.

中2項は$pq$の倍数ですから,両端の$q^3$と$cp^3$を取り出すイメージですね.

\[q^3\cdot 1=p\cdot(-aq^2-bpq-cp^2)\]
この式から$p$は$1$の約数,つまり$p=1$と分かり,題意は示せます.

ちなみに
\[q\cdot(q^2+apq+bp^2)=p^3\cdot(-c)\]
という式からは,$q$が$-c$の約数であることが分かります.

高次方程式を因数定理から解く場合,解を予想しますね.

その時に最高次係数と定数項に着目したはずです.

今回は最高次係数が$1$で定数項が$c$なので,有理数解はそれらの約数を分母子に持つものが候補となります.

一般化したものは有理数の記事(click!)で同じように証明しています.非常に大事な証明方法ですので覚えてしまいましょう.

解答:問題1

有理数解を$\frac{q}{p}$ ($p,\,q$は互いに素な整数,$p\geq1$)とおき,代入すると

\[\frac{p^3}{q^3}+a\frac{p^2}{q^2}+b\frac{p}{q}+c=0\]

分母を払って整理すると

\[q^3\cdot 1=p\cdot(-aq^2-bpq-cp^2)\]

であるが,$p,\,q$は互いに素な整数であるので,$p=1$と定まる.

よって有理数解$\frac{q}{p}$は$q$と等しく,題意は示せた.

解説編:問題2

次は互いに素の証明です.

最大公約数をおいて$1$であることを示すか,共通素因数をおいて矛盾を示すか,です.

どちらか選べと言われれば後者だけで構いません.

前者では解けない問題があるためです.

さらに,今回は$a,\,b$が互いに素という条件もありますから,その利用方法も考えながら解いていきます.

(1)です.$A,\,B$の共通素因数を$p$としましょう.

一次の連立方程式ですから,$a,\,b$について解くことができますね.

\[a=5A-2B,\,b=B-2A\]

です.この式から$a,\,b$は,$A,\,B$の共通素因数$p$を同じく共通素因数に持つため,互いに素であることに矛盾しますね.

こう考えると,別に共通素因数でなくても良さそうです.

$A,\,B$の最大公約数を$g$とすると,同じ式変形から$a,\,b$の最大公約数も$g$になる.

互いに素な二数の最大公約数は$1$ですから,$A,\,B$の最大公約数$g$は$1$です.

 

(2)はどうでしょうか.(1)のように$a,\,b$について解くのは厳しいですね.

ここで素因数をおくことの強みが出てきます.

$C,\,D$の共通素因数を$q$とおくと,$D=ab$が素数$q$の倍数ですから,$a,\,b$のいずれかは$q$の倍数.

$C=a^2+b^2$も$q$の倍数であることと併せて考えると,$a,\,b$のいずれもが$q$の倍数です.

よって$a,\,b$互いに素に矛盾しますね.

 

共通素因数をおく→互いに素に矛盾させる

という流れが多いので覚えておいてください.

 

ほぼ上のままですが一応まとめておきます.

解答:問題2

(1)

$A,\,B$の共通素因数を$p$とする.

$a,\,b$について解いて

\[a=5A-2B,\,b=B-2A\]

よって,$a,\,b$は共に素数$p$の倍数であり,互いに素であることに矛盾する.

背理法より$A,\,B$には共通素因数は存在せず,この二数は互いに素である.

(2)

$C,\,D$の共通素因数を$q$とする.

$D=ab$が素数$q$の倍数なので,$a,\,b$のいずれかは$q$の倍数.

$a$が$q$の倍数とすると,$C=a^2+b^2$も$q$の倍数であることより$b$も$q$の倍数.

$b$が$q$の倍数の時も同様なので,$a,\,b$は共に素数$q$の倍数であり,互いに素であることに矛盾する.

背理法より$C,\,D$には共通素因数は存在せず,この二数は互いに素である.

まとめ

演習メインの今回でしたが

有理数解の候補

互いに素の証明

いずれも超頻出の範囲です.暗記してしまうくらいで良いと思います.

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