論証

背理法:論証における「否定」の利用について

2020年5月27日

short summary!

$A\Rightarrow B\ $を$\ A\cup \overline{B}\Rightarrow \phi\ $に変換
証明問題では一度使えるか試す
「矛盾」がどこから生まれるか考える

はじめに

今回は「否定」特に論証における利用について考えていきます.

背理法は数ある証明の方法の中でもとても強力なものです.是非マスターしましょう!

似ているもので対偶法との違いについても解説していきます.

背理法とは

まずは背理法とは何かというところから.

証明問題では,

「条件Aが与えられて結論Bを示す($A\Rightarrow B\ $)」

という構造になっているはずです.

$A\Rightarrow B\ $において,AはBの十分条件,BはAの必要条件と呼ばれます.

 

当然Bがどういうものなのかで証明方法は様々です.

しかし,背理法は$\ A\cap \overline{B}\Rightarrow \phi\ $を示します.

「Aの内側」かつ「Bの外側」の領域に何もない,矛盾してしまう.

証明すべきものが「矛盾」と定まっているのが特徴的ですね.

 

なお,対偶法は$\bar{B}\Rightarrow A\ $を示す方法ですが,これも集合を考えると

「Bの外側」なら「Aの外側」という意味で図を見ると明らかでしょう.

 

対偶法も背理法も共に結論の否定を用いますが,証明においては,背理法に軍配が上がるでしょう.

使える条件が$A$と$\bar{B}$である点,「矛盾を示す」と割り切って考えられる点が優れています.

一方で,対偶法に関しては,命題を同値変形して扱いやすくするのに長けています.

「AならばBが成立する時,〜となる条件を求めよ」と言った問題は証明ではないので背理法は使えませんね.

こうした場合は対偶法の出番です.

否定の利用を考える

  1. 場合分けを多く含む命題
    例)少なくとも1つ・AまたはB
  2. 否定(〜ではない)を含む命題
    例)無理数・互いに素

に特に背理法(対偶法)・余事象を考えましょう.

とはいえ,一見しただけでは場合わけが多いかどうかの判別ができないものもあります.

命題は常に否定したものと一緒に考えて,扱いやすい方を選ぶというアプローチが得策と言えるでしょう.

 

場合分けを多く含む時は,その否定は少ない場合分けで済むはず,という考え方です.

「少なくとも1つはA」の否定は「1つもAではない」

「AまたはB」の否定は「AではなくかつBではない」

なので扱いやすくなっていますね.

 

否定を含む時は,もう一度否定(二重否定)することで肯定に戻せば扱いやすくなるはず,という考え方です.

 

それぞれの例を見ていきます.

・場合分けを多く含む命題

例題1

\[a^2+b^2=c^2\]が自然数$a,\,b,\,c$で成立している時,$a,\,b$のいずれかが3の倍数であることを示せ.

「$a,\,b$のいずれか」が背理法の利用を思い浮かべるヒントです.

結論の否定「$a,\,b$のいずれも3の倍数ではない」と与えられた条件「$a^2+b^2=c^2$」を組み合わせて矛盾を作ってみましょう.

3の倍数ではない,ということは余りが出るということですから,剰余系の利用が思いつけば正答にたどりつけるはずです.

例題1・解答


$a,\,b$のいずれも3の倍数ではないとする.3を法とする剰余系を考えると,\[a\equiv\pm1\]より\[a^2\equiv1\]同様に\[b^2\equiv1\]であるので\[a^2+b^2\equiv2\]

一方,\[c\equiv0,\,\pm1\]であるので,$c^2$を3で割った余りは0または1だが,\[a^2+b^2=c^2\equiv2\]はこれを満たさず,不適.

よって背理法から$a,\,b$のいずれかは3の倍数であることが示された.

・否定を含む命題

以下のものはよくある問題ですので,背理法の使い方として暗記してしまって損はありません.

〜無理数の証明〜

無理数は「有理数ではない実数」です.有理数は扱いやすい数ですから,こちらを使いたい,と考えます.

定義から紐解く有理数と無理数

short summary! ・有理数 →分数を代入,整数条件と「互いに素」の利用を意識する ・無理数 →「否定」の利用を意識する はじめに 有理数と無理数を初めて習ったのは中学生の時のはずです. で ...

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有理数と無理数に関しては↑も参考にしてください.

$X$が無理数であることの証明→有理数であると仮定して矛盾を導く

  1. $X=\frac{q}{p}$($p,\,q$は互いに素な整数,$p\geq1$)とおく
    →「互いに素」に矛盾させる
  2. $X=\alpha$($\alpha$は有理数)とおく「無理数」の条件が与えられているとき
    →(無理数)$=$(有理数)の式を作って矛盾させる

 

例題2-1

$\alpha=\sqrt[3]{3}$とする.以下の問いに答えよ.

(1) $\alpha$が無理数であることを示せ.

(2) $\alpha+\alpha^2$が無理数であることを示せ.

(1)は①を用います.無理数の条件がないからですね.

有理数とおいた場合は互いに素に矛盾させにいきます.分母分子の共通素因数を見つけてくれば良いのですね.

(2)は(1)の無理数条件が使えますから,$\alpha=$(有理数)の形の矛盾を作りにいきます.

例題2-1・解答

(1)

$\alpha$が有理数であるとすると,互いに素な自然数$p,\,q$を用いて,

\[\alpha=3^{\frac13}=\frac{p}{q}\]

と表せる.

両辺3乗すると,

\[3q^3=p^3\]

が成立しており,左辺が3の倍数であるから,$p$も3の倍数.

よって,$p=3p'$と置いて代入すると,

\[3q^3=27{p'}^3\Leftrightarrow q^3=9{p'}^3\]

よって,先と同様に$q$は3の倍数であるが,これは$p,\,q$が互いに素であることに矛盾.

背理法より題意は示された.

(2)

$\alpha+\alpha^2$が有理数であるとすると,有理数$A$を用いて,

\[\alpha+\alpha^2=A\]

と表せる.

両辺に$\alpha$をかけると,

\[\alpha^2+\alpha^3=A\alpha\Leftrightarrow\alpha^2+3=A\alpha\]

この二式を辺々引くことにより,$\alpha^2$を消去すると,

\[\alpha-3=A-A\alpha\Leftrightarrow\alpha=\frac{A+3}{A+1}~(A\neq-1)\]

(1)より左辺は無理数であるが,右辺が有理数であることより矛盾.

背理法より題意は示された.

〜素数が無限に存在することの証明〜

無限は扱いづらいですが,その否定「有限」は扱いようがあります.

とはいえ有限性の利用は少し難易度が高いですね.

有限なら「最大・最小」が存在する

ことを,今回の例題から学んでください.

例題2-2

素数が無限に存在することを証明せよ.

素数を有限個と仮定してみましょう.最大の素数が存在しますね.

「最大の素数」に矛盾を生じさせるために,それより大きい素数を見つけてきましょう.

例題

素数が有限個だと仮定すると,最大の素数$M$が存在する.ここで,$M$以下の数を全て掛け合わせた数に$1$を加えた数を$M'$とおくと,

\[M'=1\cdot2\cdot3\cdot\cdots\cdot M+1\]

上式より$M$以下のどの素数で割った余りも$1$となり,この条件において$M'$は素数である.これは$M$の最大性に矛盾する.

よって素数は無限に存在する.

この条件において

と下線を引いたところに注意しておいてください.

一般的に素数$M$に対して$M!+1$が素数とは限りません.

$M$が最大の素数であれば$M!+1$が素数と言っています.

まとめ

$A\Rightarrow B\ $を$\ A\cup \overline{B}\Rightarrow \phi\ $に変換する

  1. 場合分けを多く含む命題
    例)少なくとも1つ・AまたはB
  2. 否定(〜ではない)を含む命題
    例)無理数・互いに素

のときに特に否定の利用を考える.

が,基本的に「命題は常に否定と共に考える」

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